大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和29年(う)40号 判決

原判示事実は、原審第一回公判調書中被告人の供述記載、同第二回公判調書中証人亀井六男の供述記載、被告人の検察官に対する供述調書の供述記載によつて明認し得らるるところであるが、原判示の如く祈祷師である被を人が外一名と共に、一四、五歳の少年に対し、窃盜の自白を強要するため、「カラシバという祈祷をして身体を動かないようにしてやる。」とか、「盜んでいないなら、焼火箸をすごいても火傷しないからすごけ。」等と申向けて、少年をしてその焼火箸をすごかせた所為は、刑法第二二三条第一項の身体に対し害を加うべきことを以て脅迫し、人をして義務なきことを行わしめた場合に該当し、強制罪を構成することは明らかである。

ところで右被告人の所為が果して所論の如く傷害罪となり、その結果、強制罪はこれに吸収されることとなるかどうかについて考察すると、前示証人亀井六男の供述記載、及び医師神田橋肇作成の診断書の記載によると、被害者亀井六男は被告人等の本件犯行により、右手掌に全治五日間を要する三条の線状火傷の傷害を受けたことは明らかであるが、右傷害の結果が発生したからといつて、直ちに傷害罪が成立するものと即断することはできないのであつて相手方の身体に害悪を加う行きことを以て脅迫し、相手方をして義務なきことを行わしめ、因て傷害の結果を生ぜしめた場合において、犯人に傷害の結果に対する認識があり、且つ、脅迫の程度が相手方の意思決定の自由を失わしめるに足るものであるときは傷害罪となるが、然らざる場合には強制罪となるに止まるものと解すべきである。しかして、前示、被告人及び証人の各供記載に、原審第一回公判調書中原審相被告人山路ハルの供述記載並びに亀井六男の検察官に対する供述調書の供述記載を綜合すると、被告人等が前叙の如く、亀井六男の身体に害悪を加うべきことを告げて、同人に対し焼火箸をすごくことを迫るにあたつて、その脅迫の程度は、未だ一四、五歳の少年をして意思決定の自由を失わしむるまでには至らず、偶々右六男が勝気の少年であつたため、その焼火箸を握つてすごいた結果、前叙火傷を負つたことが看取できるのであつて、被告人の本件所為が傷害罪を構成するもとは断じ難いのである。されば、原判決が被告人の本件所為に対し、刑法第二二三条第一項の規定を適用処断したのは正当で、控訴趣意書に掲ぐる判例は必ずしも本件事案解決の参考とはなし難い。のみならず、弁護人が被告人の本件所為を以て強制罪でなく、傷害罪であると主張するのは、窮極において被告人に不利益な主張をなすものに外ならないのであつて、論旨は到底採容の限りでない。

(後略)

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